【議事録】地方の成長に資するインフラ整備について(2015年4月15日・国土交通委員会)

○中川(康)委員 おはようございます。公明党の中川康洋でございます。
 きょうは、一般的質疑ということで、大臣、どうぞよろしくお願いをいたします。
 冒頭、通告をしていないわけでございますけれども、昨日夜に広島空港において非常に大きな航空機事故が発生をしておりますので、この件についての対応、状況をちょっとお伺いさせていただきたいと思います。お許しをいただきたいと思います。
 昨夜八時五分ごろ、広島空港において、アシアナ航空機の着陸時のバウンド並びにオーバーランによる大きな航空機事故が発生をいたしております。国交省といたしましてもこれは航空事故という認定をしておるということで、具体的には、左の主翼が折れ曲がり、エンジンも破損した、そして二十二人の方がけがをされた、こういった報道がされております。これは一歩間違えると大変に大きな事故につながる可能性もあったというふうに思っておりますし、まだ空港も閉鎖という状況も伺っております。
 国土交通省といたしまして、現在把握しているような状況、さらには今後の対応について、ぜひとも大臣の方から冒頭御答弁いただきたいと思います。

○太田国務大臣 昨日午後八時ごろに、広島空港において、アシアナ航空一六二便が着陸時、滑走路から逸脱した事案が発生しまして、乗客乗員合わせまして八十一名のうち、乗員二名、乗客二十五名の負傷者が発生をしました。
 事故との関係につきましては現時点で明らかではありませんけれども、滑走路の端から東側三百二十五メートルの地上にありますローカライザー、計器着陸装置のアンテナが損傷しているとの報告を受けているところです。
 こうしたことも含めて、現在、その原因究明に向けまして、三名の調査官をけさ現地に派遣をしています。今後、運輸安全委員会による調査結果を踏まえながら、国土交通省として、必要に応じて対策を講じてまいりたいというふうに思っています。
 また、事故を受けまして、事故発生後すぐに、アシアナ航空に対しまして、運輸安全委員会の調査に協力するとともに、自社においても原因の究明を行って、再発防止策を策定の上、報告するようにと指示をしたところでございます。
 さらに、韓国の航空当局に対しまして、アシアナ航空の安全運航の確保に向けて適切に監督するよう、強く要請しているところでございます。

○中川(康)委員 突然の質問ではありましたが、御答弁をいただきまして、大変にありがとうございました。
 三名の調査官を今派遣して鋭意調査をしているということで、国土交通省といたしまして、これは韓国の方も多く乗られていたということでございますが、やはり国民の命をしっかりと守っていくということは大事であります。
 また、世界各国においても、航空機事故がさまざまな形で今発生をしている状況を考えますと、やはり、その不安をどう取り除くかというところで適時しっかりとした調査また対応をお願いしたいと思いますので、また大臣を先頭によろしくお願いをいたします。
 それでは、予定しておりました質問をさせていただきたいと思います。
 地方の成長に資するインフラ整備、特に道路について、まず冒頭、二点ほどお伺いをいたします。
 一点目は、ミッシングリンクの解消並びに新たな命の道の整備についてお伺いをいたします。
 先日、この委員会でも半島振興法の改正案が可決をしたところでございますが、日本の国土軸全体を見渡しますと、実は、半島地域において、いわゆる高速道路がつながっていないような、ミッシングリンクと言われている箇所が多く存在をしていることがわかります。
 半島地域の自立的発展、さらには地域住民の生活向上等を考えた場合、このミッシングリンクの解消というのは非常に重要な課題でありまして、この整備を着実に進めていくこと、それは、この地域においての防災・減災機能の向上や医療施設との連携、さらには都市部への規制の促進とか、都市部からの誘客によるにぎわいの創出、こういった効果をもたらす意味があるというふうに思っております。
 一例を挙げますと、私の地元であります三重県、ここにも南部に紀伊半島というのが位置をしておりまして、この紀伊半島をぐるっと回る形で、近畿自動車道紀勢線というのがございます。これまでこの道路整備を行っていただいたことにより、従来の国道の代替機能の発揮でありますとか、半島地域への誘客の促進、さらにはコンビニが新たに出店をした、こういったさまざまな効果があらわれております。
 しかし、残念ながら、この近畿自動車道紀勢線、いまだ未事業化区間も抱えておる、いわゆるミッシングリンク状態ということでございまして、この道路がさらにその機能を発揮するには、ミッシングリンクの解消、具体的には、平成二十四年度以降、新規事業化された区間の着実な整備でありますとか、未事業化区間であります熊野―串本間、これがまだ未事業でございますが、この早期事業化が大変重要な課題であるというふうに地元では認識をいたしております。
 そこで伺いますが、この高速道路網等、いわゆるミッシングリンクの解消や新たな命の道の整備、ここについて、国交省としてどのようなビジョン並びにお考えを持っておられ、そしてどのような整備を進めていこうとしているのか、この点、お伺いをいたします。

○太田国務大臣 財政制約の中での全国の道路整備を進めていく上で、私は、先ほどの質問に、計画的、持続的と、予算ということについては申し上げましたが、道路というところについても思想性をしっかり持って事に当たることが大事だと思っていまして、私はいつも三つの観点から考えております。
 一つは、大都市では国際競争力強化に役立つ経済戦略道路という位置づけ、そして地方においては医療機関への緊急輸送等に役立つ生活インフラ道路、ここをはっきり思想的に位置づけることが大事だ。
 二番目には、リダンダンシーという、防災・減災という観点を踏まえて災害時におけるリダンダンシーを確保するということが大事。
 三つ目には、コンパクト・プラス・ネットワークという、地方創生ということに絡んで、本格的な人口減少時代において、コンパクトな拠点を結ぶネットワークとしての道路の役割。
 この三つというものを常に考えながらやっていかなくてはいけない。
 そうしますと、近畿自動車道紀勢線につきましては、整備率が六三%と、いまだネットワークとしてつながっていないという状況の上に、あそこは、津波が到達するのがたしか五分とかそのくらいだというふうに記憶しておりますが、そうしたことからいきますと、津波が来てもそこに逃げ込めるようなということで、私も紀北町とかあるいは大紀町に行かせていただきましたが、高速道路を今つくっていまして、そこに階段をつくって、上って、そして道路に膨らみをつけて、そこに避難できるというような工夫もしているところでありまして、つなぐと同時に、そうした役割ということも含めた高速道路というものをつくっていくということが大事だろうと考えています。
 今後とも必要な道路ネットワークの強化につなげていきたいと思いますし、この紀勢線につきましても、整備率が低いということがありまして、重要な道路だと認識を強くしているところでございます。

○中川(康)委員 ありがとうございました。非常に力強い御答弁をいただきました。それと、やはり考え方の観点としての三つの観点、この観点を持って整備をしていただく、非常に重要な視点を今御答弁いただいたかというふうに思っておりますので、引き続きよろしくお願いをしたいなというふうにも思っておるところでございます。
 次に、今はいわゆる地方部の質問でございましたが、視点を変えて、今度は都市部、特に、産業構造の高いところにおける地域の成長を支える道路ネットワークの形成、ここについてお伺いをしたいというふうに思っております。
 太田大臣、先月十日に行われました予算委員会の第八分科会、これは国交省所管の分科会でございますが、ここでの自民党の島田佳和委員の、東芝四日市工場が隣接する国道一号北勢バイパスの整備促進を念頭に置いた、地方の成長に資する必要なインフラ整備の質問の中で、今後の公共事業のあり方についてこのような御答弁をしていただいております。
 少し紹介をいたしますと、「公共事業のあり方というものは、私はフローの効果より以上にストック効果というものを見ていかなくてはならない」「公共事業というものは、単にフローの効果で今まで判断されてきたけれども、」今後は「ストック効果というものをこの日本の中に見ていただくという時代をつくっていかなくてはならない、」このような答弁をいただいております。
 私は、今後も、限られた財源の中で、道路等インフラ整備を初めとした公共事業、これをどのように進めていくかという選択と集中の中で、今回大臣が答弁されたこのフローの効果からストックの効果という考え方、大変重要な視点を示していただいたというふうに感じております。
 そこで、繰り返しになり恐縮でございますが、このフローの効果からストックの効果という考え方について、これはアベノミクスの二本目及び三本目の矢でもあります財政出動及び成長戦略にも結びつく考え方でもあると思いますし、それ以上に、今後の地域の成長を支える道路ネットワークの形成のあり方、これに直結する重要な考え方であると思いますので、いま一度、詳しく大臣の方からその趣旨を御答弁いただきたいというふうに思っております。

○太田国務大臣 公共事業は無駄であるとかというのは、これは間違いでありまして、無駄な公共事業はやめる、必要な公共事業はやる。公共事業が無駄という乱暴な議論は間違いであろうというふうに思います。無駄な公共事業はやめるということが当たり前で、財政ということはそういうことで考えていかなくちゃいけない。
 そこで、景気対策として従来、三種の神器と言われまして公共事業を位置づけていた一九九〇年代の時期はございますが、そのときからずっと言われているのは、公共投資の効果を論ずる場合に、フローとしての短期的な効果が重視されてきたという嫌いがあったと思います。社会資本のストックとしての本来的な効果を見る視点が欠けてきたと思います。
 フローの経済効果は、いわゆる乗数効果ではかることが一般的でありますが、最新の分析によりますと、公共投資の乗数効果は一・一四であって、減税よりも効果が高いとされているところでありますが、これによって、景気の底割れが懸念される状況のもとで、需要を下支えして、デフレ不況からの脱却の進展に一定程度寄与してきたものではある、こう考えてはいます。
 しかし、何といっても、社会資本整備の本来の効果というのはストック効果であると私は考えています。
 例えば、今議員の御指摘の北勢バイパス整備、こういう道路ができます。そうしますと、三重県に東芝が進出をする、そして関連したところもある。
 先ほど、中村先生の話のところにも、余市のところに、道路がまだできていないのに投資がされるということになると、工場が林立する。
 あるいは、圏央道が最近少しずつつながってきていますけれども、埼玉県や神奈川県に工場や倉庫が物すごくふえているという状況にございます。
 また、東九州自動車道が三月二十一日に、私、開通で行かせていただきましたが、佐伯というところで、佐伯市では過去五年間で二十件の企業立地があった。陸の孤島とかいうようなことが言われたりするということで、非常に腹立たしく思っていたようでありますけれども、企業立地が進んできているということがあって、有効求人倍率がこの佐伯で何と一・四倍へ上がったという話もありますし、あちこちでそういうことがあり、この間の北陸新幹線ができるということによって、観光や企業進出というものが目に見えるような形でできているというふうに思います。
 そういう意味で、このように社会資本整備のストック効果というものは、新幹線や道路整備等で移動時間が短縮される、人流、物流の効率化が図られる、民間投資が誘発される、こういう経済面の効果。ここをよく見ていって、そこに効果があるというところに投資を、整備をしていくということの中で、いわゆるアベノミクスの第二の矢ということ、そしてそれが第三の矢につながっていくということで、実は、公共事業というのは、アベノミクスの中でも極めて重要な役割を、選択、集中をしながらやっていくということだと思います。
 また、逆の面でいいますと、老朽化対策や防災・減災、こういうことで、もしあの堤防があれば、もしあれが整備されていれば、失われた財産というものが守られた、マイナスに行くというのを抑えたということも、またストック効果であろうというふうに思っているところです。
 社会資本のストック効果が最大限発揮される必要があって、選択と集中によってこうした事業に重点的に取り組む、また、それはなぜかということについて解答を示していくということが私は大事なことだと思っています。

○中川(康)委員 大臣、大変に心強いというか、力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 このフロー効果からストック効果の視点というのは、今後の公共事業をどう進めていくか、またインフラ整備をどう進めていくか、非常に大事な部分でございまして、今御答弁いただいたように、各企業というのは予見可能性を持ってやはり進出してくるということがございます。ぜひ、この視点から今後も進めていただきたいというふうにも思います。
 そう言いながら、私どもの地元の北勢バイパス、実はまだ進捗は三割でございまして、このストック効果が非常に高い地域だと思いますので、きょうは具体的な部分の答弁は控えますが、ぜひともまたよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 残り五分でございます。
 もう一点、公共インフラの長寿命化対策、ちょっと簡潔にお伺いをしたいというふうに思います。
 いわゆる高度経済成長期に集中的に建設された橋とかトンネル、この公共インフラの老朽化、さらには高齢化が進んでおりまして、ここを適時適切に経年劣化をしっかりと点検して、また修繕、補強していくこと、これは非常に大事でございます。
 しかし、今問題となっておりますのが、この公共インフラを管理している地方自治体で、それを点検できる人材が、団塊の世代の大量の退職等を含めて、足りていないという状況が指摘をされております。
 これは、今後もいわゆる自治体の職員だけでしっかりと点検をしていくことができればそれにこしたことはないんですけれども、やはり今もう足りていないという状況を考えると、今後、いわゆる官だけでその点検をしていくことは大変に難しい状況に来ているのかなと思います。
 そういった意味においては、これからは、例えば、広く現場の知恵とか技術を持った産業界の皆さんとか、また学術的な研究組織である学術機関、こういったところの手もかりながら、産学官の連携で、この人材が足りていない、そして適時適切に点検、補修、補強をしていく、この課題を乗り越えていくこと、これが必要な時期に来ているのではないか、また、そういった取り組みもしていただいているのではないかというふうに思うわけですが、特にこの地方自治体でそういった取り組みができないかどうか。
 また、この具体的な一例といたしまして、今回、一般社団法人であります日本非破壊検査工業会、さらには日本非破壊検査協会が、昨年十一月に創設をいたしました民間資格でありますインフラ調査士の活用、こういったものも、各地方自治体において人材が足りない中、その状況をカバーしていく有効な手段の一つではないかと思いますが、国交省のお考えを伺いたいと思います。

○山田政府参考人 お答えいたします。
 社会資本の維持管理、更新のあり方につきまして、国土交通省の審議会で議論いただきまして、平成二十五年の十二月、メンテナンス政策元年のキックオフとして答申をいただいております。その中で、各自治体におけます人材不足の問題は十分に認識されているところでございます。
 例えば、国土交通省が行いましたアンケート調査におきましても、道路については、市町村では技術職員がいない割合が約一四%、一人から五人ぐらいの職員しかいない割合が四九%を占めているということでございます。
 このような自治体の人材不足を踏まえまして、答申では、市町村の体制強化、あるいは国等によります技術的な支援の充実が指摘されているところでございますので、関係者と協力を図りながら対策を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 さらに、技術的な観点から申しますと、点検とか診断等を効率的に行うことが重要であるということでございますので、レーダーを活用いたしました、例えば河川の護岸の空洞探査といったような民間が開発をいたしました非破壊検査技術などにつきまして、現場での実用化を進めているところでございます。
 また、こういう点検とか診断の質の向上を図るために、これらに携わります技術者の方々の能力を評価して活用するということも重要と考えているところでございます。
 このため、点検、診断に関します一定の技術水準を満たすコンクリート診断士のような民間資格、これを持つ技術者を国あるいは地方公共団体が活用できるような新たな制度を創設しているところでございます。
 今後とも、委員御指摘のように、民間企業の方々などが開発いたしました技術ですとかあるいは民間資格の活用等を図りまして、インフラの安全性の確保とかあるいは長寿命化といったものを進めてまいりたいと考えております。

○中川(康)委員 ありがとうございました。
 大臣も進められております防災・減災、さらには長寿命化は非常に大事な視点でございまして、しかし、やはり現場で今人材が足りないという状況が発生しているというところがあります。
 先ほど後段でお話しいただきました非破壊検査技術は非常に有効な手段だと思いますし、そういったいわゆる資格等が創設している中で、国として民間資格の認定制度を創設、活用していきたい、それを国とか、特に地方自治体で、その認定制度のもとでそれを活用していただくという流れをつくっていただく、こんなお話をいただいております。
 ぜひ、そういった流れを主流化していただいて、やはり適時適切に点検、そしてそれに伴う補修をしていただくような形で、安心、安全な国土を築いていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 以上で質問を終わります。大変にありがとうございました。